【検査値を読めるようになろう】クレアチニンとeGFR(推算糸球体ろ過量)から分かる腎臓の働き【臨床検査技師監修】

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

もくじ

腎臓とは

腎臓は、体の背中に左右2対のソラマメ様の形をしています。

腎臓の重要な働きは、血液内の老廃物を糸球体でろ過してから、尿細管で99%再吸収します。

そして、残りを尿として体外へ排出します。

腎臓は、尿をつくる以外にも様々な機能を持っています。

  • 体内の塩分と血圧の調整
  • 体内のイオンバランスを調整
  • 赤血球数の製造を助ける
  • ビタミンDの活性と骨の維持など

尿として排出される老廃物には、クレアチニン(Cr)尿素窒素(BUN)などがあります。

これらは腎機能が低下すると体内に蓄積されるため、血清中の値を調べることで腎機能の程度を知ることができます。

今回は、老廃物の1つであるクレアチニンについてお伝えします。

クレアチニンとは

クレアチニンは、筋肉が動かすためのエネルギーを使うことで発生する老廃物の1つです。

血液中のクレアチニンは、尿素窒素(BUN)と同様に腎臓でろ過されて尿として排出されます。

このクレアチニンは、尿以外で排出されません。

そして、腎臓の働きが悪くなると血液中にクレアチニンが溜まり濃度が高くなります。

そのため血液中のクレアチニンを測定することで、現在の腎機能の程度を知ることができます。

◆腎機能の評価

腎機能は、病状を知るために以下のように段階的に評価していきます。

  • 血清クレアチニン(Cr)・尿素窒素(BUN)と尿タンパクを測定 ⇒ 一般的な腎機能の評価
  • 血清クレアチニンからeGFRを測定 ⇒ 腎機能を正確に評価
  • eGFRの低下からシスタチンCを測定 ⇒ 詳細な腎機能、腎予後の評価

測定方法

◆酵素法

日本の多くの医療機関では酵素法が用いられ、自動分析装置で測定されています。

採血から結果報告までは約1時間を要します。

◆eGFR(推算糸球体ろ過量)

eGFRは、男女別の計算式に[クレアチニン(Cr)値][年齢]を当てはめて算出されます。

男性:194 × [クレアチン(Cr)値] - 1.094 × [年齢] - 0.287

女性:194 × [クレアチン(Cr)値] - 1.094 × [年齢] - 0.287 × 0.739

この数値から「腎臓がどれだけろ過して尿へ排出できる か」正確な腎機能を知ることができます。

正常な腎臓のろ過量は、90ml/min以上なので、eGFRが90ml/min/1.73m以上であれば腎機能は保たれていることになります。

そして、eGFRは以下の5段階に重症度分類ができるので、算出された数値から今の腎機能の状態を知ることができます。

  • G1 正常  eGFR:90以上
  • G2 軽度の腎機能異常  eGFR:60~89
  • G3 中等度の腎機能異常  eGFR:30~59
  • G4 腎不全       eGFR:15~29
  • G5 重度の腎不全    eGFR:14以下

基準値と異常値

◆クレアチニン(Cr)の基準値

・男性:0.5~1.1mg/dl

・女性:0.4~0.8 mg/dl

クレアチニン(Cr)は、腎機能を調べる検査ですが、筋肉量の違いで数値が変わるので男女差が見られます。

また、男女差以外にも若い筋肉質な人と高齢者では腎機能が異なるため、クレアチニン(Cr)だけで正確な腎機能を知ることは困難です。

そのため、一般的にはクレアチニン(Cr)と尿素窒素(BUN)、尿タンパクなどを組み合わせて評価します。

◆クレアチニン(Cr)の異常値

《高値》

・男性:1.2mg/dl以上

・女性:0.9mg/dl以上

8.0 mg/dl以上は、緊急措置を施す必用があるパニック値として取り扱われ、透析導入の対象となります。

腎機能が明らかに低下しないとクレアチニン(Cr)は高い値を示しません。

クレアチニン(Cr)が高くなる原因には、以下のようなことが考えられます。

  • 不摂生な日常生活
  • 遺伝や免疫低下による病気
  • 腎臓機能が正常だが筋肉量が少ない

疑われる疾患

急性・慢性腎炎、糸球体腎炎、腎不全、尿毒症など

《低値》

・男性:0.4mg/dl以下

・女性:0.3mg/dl以下

クレアチニン(Cr)の値が低い場合は、筋肉量が減少するなどの病気が疑われます。

疑われる疾患

筋ジストロフィーなど

◆腎機能の異常

軽度の腎機能異常では症状が見られないため放置されることが多く、症状が出た時に重症で手遅れとなることがあります。

そして、腎臓は一度悪くなってしまうと回復することがほとんどありません。

そこで健康診断などで定期的に腎機能検査することが大事になってきます。

◆腎機能を維持する治療法

一度悪くなった腎臓は回復が厳しいため、腎機能の改善ではなく現状を維持するための治療がおこなわれます。

治療法には、食事療法、運動療法、薬物療法があります。

  • 食事療法:適量の塩分を用いた食事
  • 運動療法:適度な有酸素運動と筋肉トレーニング、腎臓リハビリなど
  • 薬物療法:腎臓を守るための血圧と血糖の治療

まとめ

クレアチニン(Cr)は、腎機能検査の項目ですが筋肉量の違いなどで値が異なってしまいますので、尿たんぱくや尿素窒素(BUN)を組み合わせて評価します。

また、eGFRの計算式に健康診断のクレアチニン値と年齢を当てはめることで正確な腎機能の評価が出来ます。

この計算式は、数値を入れるだけで自動計算してくれるものもありますので、添付した参考文献のeGFR測定を開いていただけたらと思います。

もし、健康診断で腎機能異常を指摘された時は、腎機能障害が進行する前に医療機関に受診することをお勧めします。

⇩腎機能腎機能計算(一般社団法人 安全医療システム研究所から引用)⇩

https://sms-lab.org/comprete/egfr/

⇩クレアチニン(Cr)の検査は何のために?(人間ドックのここカラダより引用)⇩

https://dock.cocokarada.jp/check/b05_01.html

ライター名(ランサーズ名):まさざね君

<経 歴>

臨床検査技師の国家資格を2000年に取得。

臨床経験は、総合病院で15年、癌・肺疾患専門病院で5年目になります。

臨床現場では、健診から救急患者まで生理検査を中心に従事しています。

臨床検査技師は、血液などの検査値だけでなく、細菌培養、画像診断、細胞や組織などについても検査して報告しています。

これらの検査を通して、病気の原因、検査、治療、予防など分かり易くお伝えしていきます。

気になるは病気について、少しでもお役に立てれば幸いです。



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