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脳卒中をきっかけに、歯ブラシがうまく使えない、手を振るときの動きがぎこちない。
こんな症状に困っていませんか?
もしかすると失行症かもしれません。
失行症は、脳の病気をきっかけに、物品がうまく扱えず、日常生活に様々な支障をきたします。
しかし専門的なリハビリテーションや周囲のサポートにより症状が改善したり、問題なく日常生活を送れる可能性があります。
今回は、失行症の種類や家族ができる支援4選をお伝えします。
もくじ
失行症とは
失行症とは、脳の病気や怪我をきっかけに、日常生活で何気なく行っている動作や、物品をうまく扱うことができない状態を指します。
以下の状況が、直接的な原因ではないことが条件です。
1 手足の麻痺、震えが止まらないなどの運動障害
2 失語症による言語理解障害や視覚、聴覚に障害がある
3 手足の感覚が障害されている
4 認知症による上記の症状
失行症の種類
失行症の種類は大きく分類し、5つあります。
観念運動失行
特に意識しないと問題なく行える動作が、意図的にしようとしたり、真似をしようとするとできなくなる症状です。
<具体例>
・「どうやって箸を使うのですか?」と聞くと、使い方が分からなくなってしまう
・お別れをする時に、手をうまく振ることができない
観念失行
行為の順番や、道具の使用方法が分からなくなる症状です。
<具体例>
・テレビのリモコンをうまく扱えない
・シャンプーとリンスーの使い分けができない
・櫛で歯磨きをしようとする
・食事の時に箸やスプーンを使用せず、手で鷲掴みしてしまう
肢節運動失行
手や指の動きが、あらゆる場面で 不器用・ぎこちない状態です。
<具体例>
・硬貨がうまくつかめない
・ボタンをつまめない
構成失行
図形が模写できなくなる症状です。
<具体例>
・目の前にある立体図形を模写できない
・簡単なパズルができない
着衣失行
衣服を正しく着る動作が出来なくなる症状です。
<具体例>
・衣服の前後左右や上下がわからない
・袖に頭を入れようとする
・ボタンをどのように留めればいいのかわからなくなる
失行症の予後
適切なリハビリテーションと周囲のサポートを受けることで治療効果がみられ、症状が回復する場合があります。
発症から一定期間経つと、回復も難しいと言われているため、早期の支援が望ましいです。
万が一、後遺症が残ったとしても、周囲の適切なサポートにより日常生活や社会参加が可能なケースが増えています。
家族が失行症と気付けるサイン
日常生活を観察する
日常生活をよく観察することから始めてみましょう。
今までできていた行為に戸惑っている、なかなか始めようとしない様子が見られたら失行症の可能性があります。
誰でも行えるスクリーニング検査
口頭で動作を促し、うまくできない場合は、真似をしてもらってください。
・手を振ってもらう
・敬礼の前をしてもらう
・櫛や歯ブラシを持ったつもりで動作をする真似をしてもらう
これらの項目で一つでもできない場合は、失行症の可能性が高いです。
家族ができる支援
家族ができる支援を4選お伝えします。
誤りなし学習
誤りなし学習とは、失敗が生じないよう最初から正解へ導いていく学習方法です。
できない部分は、課題の条件・難易度を整え、必ず正解が得られるように学習改善することが効果的とされています。
すべてをやってしまうと逆に何もできなくなってしまう可能性があるので注意が必要です。
失行症に限らず認知症や記憶障害など様々な症状に対して有効と言われています。
<具体例>
・もし道具の使い方がわからず、手が止まっていた場合は、道具の使い方を示す
・道具の使い方や手順の書いた絵を見せる
馴染みのある道具を使う
本人が元々使っていた馴染みのある物を提供してあげましょう。
失行症の方は、新しい道具の使い方がわからないといったケースが見られます。
例えば、髭剃りの電源をつけれないという問題が発生しました。確認してみると、入院をきっかけに新しい髭剃りに変えていたといった場合があります。
シンプルな道具で選択肢を減らす
スイッチボタンのみなど、シンプルな道具の方が扱いやすいと言われています。
多機能でボタンが多い複雑な機器は余計、本人を混乱させてしまうからです。
例えば、近年電子レンジは多機能になった反面、操作が複雑化してきていますよね。温め以外の部分をテープで隠してしまうと使えるようになることが多いです。
着やすい衣類を選定する
ボタンがうまく止めれないといった場合は、ボタンのない被り服にするなど、本人にとって着やすい衣類を選定することが重要です。
その他には、ボタンをベルクロに変えるといった方法もあります。
まとめ
今回は、失行症の種類と家族ができる支援4選をお伝えしました。
失行症は、環境を整えながら間違いを防ぎ、生活の中で成功体験を踏んでいくことが重要なポイントです。
つまり周囲の方の理解やサポート体制が大切です。
掲載した複数の症状が合併した場合は、ご家族だけでの対策が難しくなります。その場合は、近郊にある病院の作業療法士やケアマネージャーにご相談ください。
カテゴリー:高次脳機能障害, 失行症【作業療法士】