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はじめに
脳卒中をきっかけに、右ばかり向いている、食事中に左側の食べ残しがあるなどの症状が見られませんか?
もしかすると、半側空間無視という症状かもしれません。
半側空間無視は、日常生活や社会参加に大きな制限をきたす症状と言われています。
症状の改善は、自身で気付いていくことが重要と言われていますが、1人だけで解決は難しく、家族の支援体勢が重要視されています。
今回は、半側空間無視の症状と家族ができる支援を5つご紹介します。
もくじ
半側空間無視とは
半側空間無視は失認症の症状の一つで、脳卒中(脳梗塞や脳出血)により、空間が認識しにくい状態を指します。
半側空間無視の多くは、右の脳を損傷した結果、左側の空間に起きやすいと言われており、視力とは関係のないことが特徴です。
軽症の場合は、日常生活に支障がないこともあります。
一方重症の場合は、1人で安全に日常生活を送ることが難しく、過ごしやすい環境を整えるなどの家族のサポートが必須になります。
半側空間無視の症状
半側空間無視の症状の具体例を挙げていきます。
常に右ばかりを向いている
左側にあるものによくぶつかる
左側に食べ残しがある
左側の道を認識せず進んでしまう
髭剃りや整髪時、右側しか行わない
極端に言えば左側の空間そのものがなくなってしまっている状態です。
そのためご家族が、日常生活を観察する中で起きている問題を確認していくことが重要なポイントとなります。
半側空間無視における方針
リハビリテーションでは、左側の空間が認識しにくいという気づきを促すことが重要と言われています。気づきが増えていくと症状が改善していくことがあります。
一方で半側空間無視がある方に対して、急な見えない方向からの刺激は精神的なストレスになるとも言われています。
左側の方に注意を向けることを促し過ぎてしまうと、日常生活の中で常に努力が必要な状態になってしまうからです。
そのため生活場面では、楽に安心して過ごせるよう支援をし、症状の改善に関しては、専門的なリハビリで目指すことがおすすめです。
生活場面での具対的な対策5選
家族ができる支援を症状に合わせて、5つ挙げていきます。
右側から話しかける
常に右側を向いている方に対しては、右側から話しかけることが有効です。
私たちも急に後ろから話しかけられると、びっくりしてしまいますよね。
左半側空間無視の方は、右側の空間のみで生活を送っているような状況です。
そのため話し手が認識しやすい位置を把握することが大切です。
まずは本人が安心して会話ができることを心がけましょう。
部屋に危険な物を置かない
左側のものによくぶつかる人に対しては、部屋を綺麗にし、危険な物を置かないことが原則です。
理由は、左側の物を認識せずにぶつかったり、足元の物を踏んでしまって、転倒などの怪我につながるためです。
どうしても環境を変えれない場合は、左側へ首を回したり、目線をむけてどんなものがあるのかを一緒に確認していくことで徐々にぶつかる頻度が減っていきます。
食事のトレイや皿を右側に置く
食事の食べ残しへの対策は、食事のトレイやお皿自体を右側におくことが推奨されています。
本人が慣れてきたら、徐々にトレイ自体を真ん中の方にずらしていくことで食べ残しが減る可能性があります。
別の方法として、左端が認識しやすいように目立つ色のテープを貼るのも効果的です。
食前に本人に伝えておくことで、左側を自ら探索していけることがあります。
本人の認識しやすい目印を一緒に決める
本人が認識しやすい目印を一緒に決めて、目的地の入り口に置くことが効果的です。
具体的には、好きな色の折り紙や好きなキャラクターなどを、置くケースが多いです。
最初は目印を探す過程を一緒に行い、慣れてきた段階でそばから離れていくとよいでしょう。
鏡やスマートフォンで自身の状況を確認する
整髪が不十分、ひげの剃り残しへの対策として、鏡やスマートフォンで実際に写真や動画を撮影し、ご本人に確認してもらう方法があります。
自身の状況を客観的に確認することができ、気付きにつながるためです。
気付いてもらった後は、反復して行うことが効果的と言われています。
一方、口頭で指摘をすることでストレスを強めてしまう場合があるため、言葉の選択は留意しながら一緒に確認を行う姿勢を取りましょう。
まとめ
半側空間無視は、左側の空間が認識しにくい状態ですが、周囲からは理解されにくい症状のため、家族の理解や支援体制が重要となります。
楽に安全に暮らせることを重視し、注意深く観察をしながら、起きた問題に対し、環境を整えることで症状が改善することがあります。
一方、症状への対策は一筋縄ではいかないケースもあります。
万が一お困りの際は、リハビリ専門病院などの医療機関と連携をしながら解決をしていきましょう。