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尿検査と腎臓
健康診断で必須の検査といえば尿検査。
尿検査で用いる尿の採取(検尿)は、採血と異なり痛みを伴わないので簡便といえます。
一般的な尿検査は、試薬の付いた専用の試験紙(ろ紙)を用いてタンパク、糖、血液(赤血球・白血球)、ケトン体などが尿中に出ているかを調べる尿定性検査です。

◆腎臓の働き(糸球体と尿細管)
タンパク質は身体に必要な物質のため、通常であれば尿中に出てくることはありません。
しかし、腎臓内の糸球体がダメージを受けると尿中にタンパク質が漏れ出てきます。
糸球体とは、腎臓に運ばれてきた血液をろ過して老廃物を排出する働きをしています。
糸球体は、毛細血管が球状に集合した構造をしていて、1個の糸球体の大きさは0.1~0.2mmくらいあり、1つの腎臓に100万個あります。
糸球体でろ過された尿の99%が尿細管で再吸収されて体内に反映され、残りの1%が尿として排出されます。
尿細管で老廃物以外の栄養素、塩分、電解質(イオン)などは再び体内に戻されることで体内の水分を保ったり、イオンバランスの調整をして、身体を一定の状態に保ちます。
今回は、腎臓病の早期発見に繋がる尿タンパクについてお伝えします。
もくじ
尿タンパクとは
健康診断で尿タンパク陽性を指摘されても症状がないので、医療機関で詳しい検査を受けずに放置してしまう人も多いようです。
尿タンパクが原因の腎臓病は、病気が進行しないと症状が現れません。
むくみや貧血などの症状が現れると、病気がかなり進行していて透析が必要となることもあります。
タンパク尿が出ている方は、病気が進行している可能性もあります。
念のために、以下の項目についてセルフチェックしてみて下さい。

- 尿の泡立ちが消えにくい
- 疲れやすい
- 夜中に2回以上トイレに行く
- 目まい、立ちくらみが増えた
- 動悸、息切れがある
- 喉が渇く
- 血圧が高い
- 頭痛の回数が増えた
- 食欲がない
- 顔色の悪さが気になる
(日本臨床内科医会 タンパク尿の意味と対策より引用)
尿タンパクは、病気以外に以下のような場合でも見られることがあります。
- ストレス
- 激しい運動
- 睡眠不足
- 発熱後
- 妊娠
- 脱水など
尿タンパクは、一過性のものであれば問題ありません。
しかし、尿タンパク異常を毎回指摘される時は、腎臓の糸球体に何らかの炎症が続いているため腎機能が低下していることが疑われます。
検査法
尿タンパク検査は、定性検査と定量検査に分けられます。
◆尿(タンパク)定性検査(試験紙法)
定性検査は、尿試験紙と呼ばれる反応試薬のついたろ紙を尿に沁みこませて色の変化を(+)や(-)で判定します。
この検査法は、簡易的に行われる検査のため健康診断などで幅広く測定されています。
ただ、定性検査(尿試験紙法)で尿タンパク(+)と出ても病気以外が原因の場合もあります。
尿タンパク(+)を毎回指摘されない時は、可能であれば市販の尿試験紙で複数回検査することをお勧めします。
ドラックストアなどで1セット(10~50枚)を1,000~2,000円程度で購入できます。
◆尿タンパク定量検査

定性検査(試験紙法)で(1+)以上の陽性で精密検査が必要なときに実施されます。
ただ、尿中タンパクの排泄量は日中に高く夜に低い傾向があるため、24時間の蓄尿を用いて検査します。
蓄尿が困難な場合は、尿中のクレアチニンも測定して尿タンパク量/尿クレアチニン比を求めることもあります。
基準値と異常値
◆尿(タンパク)定性検査(試験紙法)
・基準値:(-)
通常であれば、尿中にタンパクが見られないので(-)と判定されます。
・異常値
(+-):15mg/dl(0.015g/dl)
(1+):30mg/dl(0.03g/dl)
(2+):100mg/dl(0.1g/dl)
(3+):300mg/dl(0.3g/dl)
(4+):1000mg/dl(1g/dl)
尿タンパク定性検査で(1+)以上が認められたときは、1日に150mg(150mg/day)以上のタンパク尿が出ていると予想されます。
◆尿タンパク定量検査
・基準値:120mg/day(0.12g/day)以下
尿タンパク定量は、24時間の蓄尿で測定することで1日の尿タンパク量がわかります。
しかし、蓄尿が困難な場合は尿中のクレアチニンを測定して、尿タンパク/クレアチニン比を求めることで判定することができます。
・尿タンパク/クレアチン比(基準値):0.15g/g・Cr未満

・異常値
軽度タンパク尿:0.15~0.49g/g・Cr
高度タンパク尿:0.50g/g・Cr以上
◆疑われる疾患
慢性腎臓病(CKD)、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症など
まとめ
腎臓の病気でタンパク尿が原因の場合、病気が進行するまで症状が現れません。
そのため、気がついた時には透析が必要となる場合もあります。
もし、健康診断で尿タンパク(+)と出た時は、市販の尿試験紙で複数回検査することをお勧めします。
(-)または一過性の(+)であれば、病気は否定できます。
しかし、持続性または複数回の(+)の時は、特に腎臓の病気が疑われます。
この場合、蓄尿して1日の尿タンパクを調べる、腎機能検査(尿素窒素、クレアチニン)、画像診断などの精密検査が必要となります。
腎機能検査(血液検査)の詳細については、下記をご参照ください。
持続性の尿タンパクなどが見られて病気が疑われる場合は、早めに医療機関に受診してみて下さい。
〈参考文献〉
↓↓『タンパク尿の意味と対策』(日本臨床内科医会より引用)↓↓
https://www.japha.jp/general/byoki/protein.html
ライター名(ランサーズ名):まさざね君
<経 歴>
臨床検査技師の国家資格を2000年に取得。
臨床経験は、総合病院で15年、癌・肺疾患専門病院で5年目になります。
臨床現場では、健診から救急患者まで生理検査を中心に従事しています。
臨床検査技師は、血液などの検査値だけでなく、細菌培養、画像診断、細胞や組織などについても検査して報告しています。
これらの検査を通して、病気の原因、検査、治療、予防など分かり易くお伝えしていきます。
気になるは病気について、少しでもお役に立てれば幸いです。
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