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◎この記事の中の人プロフィール◎
【年齢】40歳
【職業】商社にてタイ・中国・ベトナムからの輸入の貿易実務担当⇒専業主婦
【既往歴】うつ病とバセドウ病(現在は甲状腺機能低下症)、双方ともに服薬中
【喫煙】なし
【飲酒】なし

皆さんは甲状腺の病気と言うと、どのようなイメージを持ちますか?
私はうつ病の診断を受けた後に、甲状腺の病気であるバセドウ病の診断も受けました。
身体への負担が大きく、心臓がいつも激しく動いているため動悸が辛く、身体が休まらずにへとへとになる、そんな経験しました。
今回は、私が体験したことをお話ししたいと思います。
もくじ
甲状腺の病気の様子
発症までの様子と原因
私は2006年にうつ病、そして翌年の2007年にバセドウ病の診断を受けました。

その頃の生活は、過重な労働と強制参加の飲み会が1週間のうちに度々あり、そのせいで深夜まで連れ回されることが多い状態でした。
そのため、慢性的に睡眠不足で満足に休めていなかったと思います。
あと、家族についても悩みを抱えている時期でした。
今思うと、これらの体や心への負担が原因で発症したのだと感じます。
悪化していく症状と病院めぐり
バセドウ病の診断を受ける3か月ほど前から、激しい下痢をするようになりました。

近隣のクリニックに受診しましたが対応できないとのことで、消化器の専門病院を紹介されました。
しかし、この病院でも同じような投薬が行われただけで、症状は全く良くなりませんでした。
その後も更に下痢の症状はひどくなり、1日のうちに30回以上もトイレに行くようになってしまいました。
水を一口含むだけでトイレに行きたくなり、ついには食べ物も飲み物も受け付けない体になってしまいました。
病院は、最終的に大学病院を受診し、そこで大腸内視鏡検査を受けることになりました。
バセドウ病の診断を受けた頃
大腸内視鏡の結果は異状なしでしたが、その後の診察で担当医師から「これはバセドウ病かもしれない」と言われました。
この病気にたどり着いたきっかけは、問診時に私が「へとへとで」と言ったことでした。

医師はその言葉が気になったようで、私が「ここに来るまで、タクシーで来たけど、やっとやっとで五分と連続して歩けないし、待ち時間も横になっていました」と来院までの様子を伝えると、喉の触診をしました。
すると医師は「腫れていますね。やはりバセドウ病かもしれません。」と、今度は確信をもって話していました。
私自身はバセドウ病と言う病気は初めて聞いたので、とても驚きました。
詳しい診断と下痢症状の正体
食べ物も飲み物も受け付けない私は入院する事になり、24時間の点滴治療を受けました。
この時の体重は37㎏しかありませんでした。
その後、改めて血液検査を受け、1週間後に結果が出ました。
内分泌科の医師によると、「検査結果によると、少なくとも半年前にはバセドウ病に罹患していた。もしかすると1年前からという可能性もある。」と結果の紙を指し示しながら説明してくれました。
そしてさらに、「うつ病とのことだが、診断を受けた病院で甲状腺ホルモンの血液検査を受けたか?」と質問されました。
私は甲状腺ホルモンの血液検査は受けていませんでした。
どうやら、この大学病院ではうつ状態の患者には必ず甲状腺の血液検査を行っているとのことでした。
甲状腺ホルモンによってうつを引き起こすことがあるからだそうです。
私は、この情報すら初耳でした。
医師が言うには、私のうつ病も甲状腺由来の可能性があるが、すでに分からない状態なので合併症との診断でした。
更に、ずっと続いていた下痢に関しても「下痢はバセドウ病のいたずらだよ。とにかく消耗が酷いから、強い薬で治療するよ。リン酸コデインといって、錠剤になると麻薬になる薬だよ。酷い下痢だからどうなるか分からないけど、これを使ってみよう」と言ってくれました。
医師の指示通り、しばらくリン酸コデインを飲んだところ、下痢は止まりました。
本格的に始まったバセドウ病の治療
大学病院の内分泌科は、新規患者の受付をしていないとのことで、私は有名な甲状腺疾患の専門病院に通うことになりました。
第一段階
バセドウ病の治療の第一段階は、過剰分泌されているホルモンを抑えるための投薬治療です。
私はメルカゾールという薬を使って治療を進めました。
しかし、この薬で無顆粒球症という副作用を起こしてしまいました。
無顆粒球症とは、白血球が激減する病気です。
そのため生活にも制限があり、お風呂はシャンプーも含めて禁止、ベッドから離れる時や人と接する際にはマスク着用などを指示されました。
この頃の私は、何がなにやら分からなくなるくらい具合が悪くて、朝ご飯を運ばれてきても気付けず、毎日寝入ってしまっていました。
その後1週間ほどで白血球の数値は元に戻り、バセドウ病の治療薬もチウラジールというものに切り替えました。
この薬では副作用は起きませんでした。

薬によるコントロールは、私の場合難航しました。
甲状腺ホルモンの数値が高くなりすぎたり低くなりすぎたりしてしまい、微熱が出ることもありました。
また、喉が渇いて1日に5,6リットルの水分が必要になったり、朝起きると枕に髪の毛がごっそり抜け落ちていました。
症状も、まるで走っているように心臓がドキドキして、激しい動悸を感じていました。
投薬を半年続けた結果、症状の改善が見られず主治医に「薬でのコントロールは不可能」と告げられました。
第二段階
投薬治療の次は、アイソトープ治療に進むことになりました。
アイソトープ治療とは、放射性のあるカプセルを飲む治療法です。
このカプセルの放射性には、肥大した甲状腺を小さくする効果があります。
この治療の苦しいところは、自分の肥大した甲状腺の大きさに合ったカプセルの量を決めるため、2週間ほど甲状腺の薬を飲まずに正確な大きさを測る必要があることです。
薬が飲めない期間は、胸のドキドキが治まらず、夜も普段の睡眠薬では眠れず、この時は一時的に睡眠薬の量が増えてしまいました。
この治療法の効果が出るのは、半年~1年後です。
バセドウ眼症
また、アイソトープ治療を受けた人の10人に1人が『バセドウ眼症』になる可能性があると告げられました。
この病気はいくつかタイプがあり、
●まぶたが吊り上がり、眼が開いた様に見えるもの
●眼球が飛び出るもの
などの症状がでるそうです。
私はバセドウ眼症になる可能性が高いとのことで、バセドウ眼症専門の眼科にも通うことになりました。
最初の頃は半年に1回の通院でしたが、そのうち1年に1回の通院で良くなりました。
受診時には色々な検査を受け、眼に異常が起きていないかチェックをしてもらいました。
バセドウ眼症になるメカニズムはまだわかっていないとのことでしたが、[甲状腺の病気の治し方 伊藤公一監修]という本によると、症状が出る人は20~30%の割合だと書いてありました。
15年ほど眼科に通い続けましたが、「もう診察を終わりにしてもいいかもしれない」と去年医師に言っていただけたので、バセドウ眼症は回避できたようです。
好転と、予期せぬ効果
結局、発病から甲状腺ホルモンの数値が正常値に落ち着くまで4年以上かかりました。
治療中はとてもつらい日々を過ごしましたが、会社を辞めて治療に専念したことが良かったのだと思います。
しかし、驚くことに今度は甲状腺ホルモンの足りない状態、甲状腺機能低下症になってしまったのです。
アイソトープ治療で飲んだ放射性カプセルの効果が8年越しに効いてきてしまったせいです。
この症状により、甲状腺がとても小さくなってしまい、必要量を分泌できなくなってしまったのです。
今の医学の限界なのかなと仕方なく思う一方、ショックも受けました。
今は、チラージンという甲状腺ホルモンそのものを製材にした薬を使って治療を進めています。
まとめ
私は甲状腺の病気にとても苦しみました。
私が罹患した2007年頃は、甲状腺の病気は見つかりにくいものだったのです。
それゆえ発見が遅れ、見つかった時には病状がとても重くなっていました。
安定し始めた時には、主治医に「酷かったからね」と言われたほどです。

ずいぶん苦しみましたが、今は薬を飲んで普通の日常生活を送ることができています。
バセドウ病を見つけてくれた先生と、今でも治療をしてくれている主治医には感謝しています。
色々な病気がありますが、この病気は最悪なものではないと私は考えます。
治療をキチンとしていけば、怖くありません。
これからも治療を継続していきますが、上手く付き合っていこうと思っています。
手術に至らなくて良かったと考えています。
同じ病気で苦しんでいる人へのメッセージ
バセドウ病や橋本病、甲状腺機能低下症は完治しません。
お薬を飲まなくなったとしても、治ったということはありません。
ですが、ガッカリしないでください。
今は良いお薬もあるとのことで、服薬しながら普通の日常生活を送ることができるようになります。
バセドウ眼症が怖いかもしれませんが、私自身は通院中の15年間で目に異常のある患者さんを見たことがありませんし、リスクがあっても専門の眼科で診てもらえます。

症状が出たらとてもつらいかもしれません。
そんな時は、休みましょう。
身体が一番大事です。
そして、主治医を信じて安定するまで耐えましょう。
明けない夜はありません。
かなりひどい症状だった私も、今はこうして普通に生活しているのですから。
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