食欲増加とその対処法

生命を維持するために必要な「食べる」という行為は、「食べたい」という欲求、いわゆる食欲が起こることから始まります。

食欲があるおかげで食事を摂ることができ、うっかり食事を摂り忘れて飢えてしまった、なんてことも起こりません。

また、必要な栄養を適切なタイミングで体内に取り込むことができます。

このように、適度な食欲は、私たちの体を健康に保つために重要な役割を果たしているのです。

しかし、その食欲が強くなりすぎるとどうでしょうか。

食べる量のコントロールが難しく、食べ過ぎてしまいます。

その結果、本来健康を維持するためであるはずの食事が、胃腸に大きな負担をかけてしまったり肥満生活習慣病をはじめとするさまざまな疾患などを引き起こす原因になってしまうのです。

食欲とは

食欲とは、動物に共通してみられる「食べたい」という欲求のことをいいます。

食欲を感じると、それがきっかけとなって食べるという行動を起こします。

生命を維持するためには食べることが必要ですので、食欲は、数ある欲求の中でも非常に重要で基本的な欲求と位置づけられています。

食欲のメカニズム

それでは、食欲はどのようにして起こるのでしょうか。

食欲のメカニズムについてはまだ解明されていない部分もたくさんあります。

食欲に関係する感覚には「空腹=お腹がすいた」「満腹=お腹がはった」がありますが、この感覚がきっかけとなって「食べたい」という欲求から「食事を摂る」、そして「もう食べられない」と感じると「食べるのをやめる」という行動を起こします。

「食べたい」という欲求がおこるきっかけともなる「お腹がすいた」という感覚は、血糖値が下がることから始まります。

空腹時は、血糖値(血液中のブドウ糖の量)が少なくなります。
また、体に蓄えられている脂肪が分解され、血中に遊離脂肪酸が増えます。

この「ブドウ糖の不足」「遊離脂肪酸の増加」という血液の変化によって、脳の視床下部にある「摂食中枢」が刺激されて「空腹感」を感じ、食欲が湧き起こります

食欲を満たすために食べるという行動を取りますが、食事が進んで血糖値が上がってくると、しだいに空腹感がおさまってきます

さらに血糖値が上がると、今度は脳の視床下部にある「満腹中枢」が刺激を受けます。

そうすると「満腹感」を感じ、食事を終了します。

このようにして「摂食中枢=空腹感」「満腹中枢=満腹感」交互にはたらくことによって、必要な栄養素を必要な分だけ適度なタイミングで体に取り込むことができるのです。

それに加え、さらに習慣(食事の時間になった、しばらく食べていない時の口さみしさ)や感覚(美味しそうな食べ物を見た、調理の音やにおいを感じた)、想像などによっても食欲がそそられます。

食欲が増える原因

食欲が増える原因にはさまざまなものがありますが、比較的多くの人が経験するものに「精神的ストレス」「無理なダイエットの反動」などがあります。

食べることによって、食欲が満たされるだけでなく快楽や満足感が得られることもあり、食べることがストレスの解消法になっているという人も少なくありません。

脳の視床下部にある「摂食中枢」が刺激を受けたり、「満腹中枢」の働きが悪くなると、空腹でなくても食欲を感じるようになります。

摂食障害(過食症)、糖尿病、甲状腺機能亢進症、薬剤の副作用(ステロイド剤など)が背景にある場合もあります。

そして近年、食欲には「レプチン」というホルモンが関係していることがわかってきました。

レプチン満腹中枢を刺激して食欲を抑制する働きがあり、食事によって脂肪細胞が増えてくると、その脂肪細胞から放出されて食欲を止めようと働きます。

しかし肥満が進むと、レプチンの働きが悪くなり、食欲を抑制する力が弱くなります。

食欲を抑えるには

肥満や血糖値が気になっている、治療のために食事制限が必要などといった理由で、どうにか食欲を抑えたい、食欲を抑える方法が知りたいと願う人は多いのではないでしょうか。

しかし、食欲というものは自分の意思とは関係なく自然に湧き起ってくる欲求です。

その欲求そのものを抑えることは、そう簡単ではありません。

中には、食欲に打ち勝つためストイックに自分を追い込む人もいますが、よほどの目的やきっかけがないと難しいものです。

食欲に逆らって食べることを厳しく制限することはストレスの原因になったり反動でリバウンドしてしまったりと、かえって別の影響が出る心配もあります。

食欲を抑えたい目的

それでは一体なぜ、食欲を抑えたいと考えるのでしょうか。

食欲を抑えることで「食べる量を減らしたい」「体重を減らしたい」「病気のコントロールが必要」など、目的は人それぞれ違うのではないかと思います。

しかし、よく考えてみると「食欲を抑える」というのはあくまで目的達成のための手段にしか過ぎませんね。

食欲が旺盛でも、食べ方を工夫することで「食べる量を減らす」「体重を減らす」「病気をコントロールする」という目的が果たせる可能性もあります。

食事摂取量を減らすための食べ方

湧き上がってくる食欲を抑えるためには、「食べること」が先決です。

食べることで「満腹中枢」が刺激されて満腹を感じると、食欲が止まります

食べ始めてから満腹中枢が刺激されるまでに15~20分ほどの時間がかかりますので、それまでの間の食べ方によって、トータルの摂取量が左右されるのです。

満腹を感じるまでに、急いで食べればたくさんの量を食べられることもありますし、反対に少しの量でも満腹を感じることもできます

満腹中枢を刺激する食べ方の工夫

満腹感が得られると、欲求が満たされて幸せな気分になれます。

上手に食べて、食べ過ぎることなく適量で満腹感を感じてみましょう。

  • 一口の量を少なめに(箸先が細いお箸で上品に)
  • よく噛んで(めやすは一口30回)
  • 味わって食べる(味だけでなく見た目や香りも楽しんで)
  • 時間をかけて食べる(20分以上が理想)

お腹いっぱい食べたい時

腹八分目がいいということはわかっていても、お腹いっぱい満腹なるまで食べたいこともありますよね。

そういう時は、たくさん食べてもいい食べ物を選びます。

  • たんぱく質(肉、魚、卵など)肉の脂身や鶏皮はできるだけ除きましょう
  • 野菜、きのこ、海藻類

これらの食材を積極的に摂取することで、食べ過ぎによる影響を抑えることができます。

その他の食べ方の工夫

その他、間食を減らす、糖分の多い飲み物を減らす、食事は野菜から食べ始める(ベジファースト)、夜食をしない、などといった方法も効果的です。

また、適度な運動は食欲を抑える効果があることが証明されています。

これらのうちで一つでもできそうなことがあれば、試しに続けてみませんか?

おわりに

この飽食の時代、健康を語る上で、食べることがまるで悪いことのように扱われてしまうことがあります。

しかし、食べることは栄養摂取の目的だけではなく、他者とのコミュニケーションや生きる楽しみなど日々の生活を豊かにしてくれるもの、という側面もあります。

だからこそ、食事は健康を害する悪者ではなく、健康づくりに役立ってくれる、そして暮らしに楽しみや充実感をもたらしてくれる味方であって欲しいと思います。

最後までお読みくださりありがとうございました。


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