【言語聴覚士が教える~食べる仕組みと障害】

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食欲の秋ですね。秋には多くの美味しい食べ物がありますが何がお好きですか?美味しいものを食べることも大切ですが、普段自分がどうやって食べているかご存じでしょうか? 食べることは、咀嚼し、嚥下することです。

そのメカニズムをご存じですか?
口の中で何気なく起こっている、すごいことを一緒に調べてみましょう。

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摂食嚥下とは?

「摂食嚥下」には食べ物だと認識し、咀嚼し、嚥下するまでには、5段階に分かれると考えられています。先行期(認知期)、準備期、口腔期、咽頭期、食道期です問題なく食事できているということは、この5期がスムーズに行われているということです。

問題が生じうまく嚥下までいかないことや、うまく嚥下できないこと嚥下障害といいます。嚥下の5期について、またそれぞれの時期でどんな問題が生じるとどんな障害が出るのかを見ていきましょう。

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口の中の構造をチェック

先行期(認知期)
食べるにあたってここで大切なのが視覚です。まず食べ物を見て、「美味しそうだな!」「硬いかな?」「どんな味?」「匂いは?」「温度は?」ときに無意識に食べる準備が始まります。食べ物を見て、これから食べるという感覚が脳に伝わることで、食欲が刺激され唾液がでたりします。食べるための準備期間のことをいいます。

〇問題が起きると〇
食べ物を食べ物だと認識できない。嗅覚が低下し食欲が出ない。口の中の感覚が低下し、次から次へと口に入れほうばってしまうなどの問題がでます。認知症の方や高齢の方にみられる症状です。

〇改善する方法〇
食べ物の名前や味が想像できるような会話をすることや、口の体操を行うことで口の中の感覚を高めます。一口量がコントロールできない場合は、小さめのスプーンにかえることや、ストローで飲むようにすることで、コントロールが可能です。それでも難しい場合は、食事介助をおすすめします。

準備期
食べ物を口の中に入れ咀嚼します。その時に、顎、頬、歯、舌、唾液を使って食べ物を細かくし、唾液と混ぜ合わせることによって味を理解するとともに、飲み込みやすくするために塊(食塊)を作る時期です。

〇問題が生じると〇
うまく咀嚼できずに食事に時間がかかる。食塊がうまく作れず咽頭や喉頭へ落下する。大きな食塊のまま丸呑みするような症状が見られます。ここでうまく呑み込めない場合や食塊が大きい場合には、むせることや窒息の危険があります。

〇改善させる方法〇
義歯(入れ歯)を使用している場合、装着が安定しているかを確かめる必要があります。義歯が不安定である場合、噛み合わせがうまくいかず細かく咀嚼できないのかもしれません。また、咀嚼しやすい食べ物に変更する(やわらかいもの)必要があるかもしれません。本人の嗜好とする合わせながら食事状況を観察し、変更することをおすすめします。

口腔期
舌や頬を使い、食塊を飲み込むため咽頭のほうに送り込みます。舌を前方から口蓋に押し付けることによって、咽頭のほうに一気に押し込むように送り込みます。

〇問題が生じると〇
食塊を適度な大きさに作ることができない。うまく舌をコントロールできず、うまく食塊を咽頭に運ぶことができない。口の中に食べ物が多く残ったままの状態で嚥下しようとすることで窒息の危険がある。

〇改善させる方法〇
食事の姿勢に注目し、うまく本人が飲み込みやすい姿勢や角度を考える。食事内容が本人に合っていない場合には、食事を柔らかくすることやとろみをつけることにより、食塊を形成しやすくさせる。

咽頭期
脳にある嚥下中枢からの刺激によって、食塊を嚥下反射によって食道まで運びます。ここが「ごっくん」と飲み込む時期です。

ここで起きる反射に注目!!
飲み込むときに何が起きているんでしょうか?飲み込むときに嚥下反射が起こります。反射が起こる時は一時的に呼吸が停止し、鼻咽腔が閉鎖します。そうすることで、食物が鼻に抜けないようになっており、咽頭の収縮や舌骨・喉頭の挙上が起こり食道の入り口部分が開きます。また、喉頭蓋が倒れることによって、気管にフタをし肺を守ります。

〇問題が起きると〇
食塊が咽頭に入り込んでくるタイミングと嚥下反射のタイミングがずれ、誤嚥する(気管に入る)。咽頭の収縮が弱く、食べ物が残留する。咽頭の残留物を誤嚥する。食道の入口部が開かずうまくに見込めない。

〇改善させる方法〇
嚥下のタイミングがずれる場合、食べ物に増粘剤を含ませることによって、食塊の動きを遅くし、誤嚥を予防することができます。また、一口量を減らすことや、嚥下を数回反復させることも有効です。
嚥下後に、声を出してもらい喉に食べ物が残っていないか、を確認します。その際にガラガラと湿った声(湿性嗄声)が聞こえる場合には、咳払いとろみをつけたお茶などで喉の残留物を取り除きます。

食道期
道期では、食道の入口にある食道括約筋が収縮して閉鎖されとともに、食道の蠕動運動によって胃へと送られます。ここでは、自分でコントロールすることはできません。
この食道期にきてやっと「食べる」ことが完了します!

〇問題が起きると〇
食道逆流逆流物の誤嚥などが生じる場合があります。食後のむせやゲップなどはないかを確認してください。長時間、痰が絡む場合には、逆流性の疑いがあるかもしれません。

〇改善させる方法〇
食事後は座位姿勢の保ち様子を観察しましょう。一口量の調節や嚥下を反復させることで様子を見ましょう。改善が見られない場合や逆流性の疑いがある場合には、消化器内科への受診をおすすめします。

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このように、食べる前から胃に運ぶまでの一連の流れを、食べること「摂食嚥下」といいます。口の中で無意識にこんなことが行われていたんですね。反射や各器官の動作一つとっても、正常に働かない場合に障害が生じるんですね。

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言語聴覚士からのアドバイス!〜注意したい食材とは!?〜

高齢者や嚥下障害を持つ方は、毎回の食事に気を使われておられるのではないでしょうか?

〇水分の多いもの
水分は流れが速く、嚥下の反射が出にくい場合、反射が起こる前に咽頭に入り込み誤嚥する危険があります。
→水分や食べ物に、ゼラチンや増粘剤を使用することを使用することをおすすめします。

〇まとまりにくいもの
水分が少なく、ぱさぱさしたものはまとまりにくくのどに詰まったり、むせる原因になります。「パン・ケーキ・クッキー・おせんべい」など

〇粘りのあるもの
粘りのあるものは、噛みにくく、のどに詰まらせることがあります。
「お餅、団子」など

〇くっつきやすいもの
頬や歯、上顎にくっつき口の中に残存しやすくなります。口の中でまとまりにくく嚥下が難しい場合があります。
「わかめ、のり」など

家族でご飯 イラスト に対する画像結果

食べることは生きるために大切なことともに、人生の喜びでもあります。家族みんなが、好きなものを楽しく、いつまでもおいしく食べれるように、日ごろから「食べること」について意識することは大切です!!

ライター名(ランサーズ名):Lin Let

<経 歴>

2012年に言語聴覚士資格を取得し、リハビリテーション病院回復期で2年、訪問外来リハをおこなう医院で3年の臨床経験があります。

臨床現場では、主に高次脳機能障害、摂食嚥下障害、構音障害などの疾患を持つ方を対象にリハビリを行っていました。

現在は海外で日本語教師などの仕事を行いながらライターをしています。

言語聴覚士がかかわる分野での疾患や体の機能などについて、わかりやすく説明できるように心がけています。

生活に役立つ情報を提供できれば幸いです。


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カテゴリー:”薬”立つ情報, 言語聴覚士【食事】

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