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今回は前回の【腰部脊柱管狭窄症】医師と患者の対話形式②【診断】の続きです。
腰部脊柱管狭窄症に「タリージェ」が処方されたところから、患者さんが処方箋をもって来局し薬の説明を受けるところを記事にしましたので参考にどうぞ。
処方
タリージェ(5mg)
1日 2回 朝・夕食後 14日分
こんにちは。
こんにちは。今日は痛みがあって受診したのですね。
はい、両脚がしびれてしまい、だんだんと力が入らないことを先生にお話ししたところ薬が出されました。
なるほど、分かりました。力が入らなくなるということですね。
何か検査はされましたか?
MRIとレントゲンを撮ってもらいました。
結果はなんだか難しい病名だったのですが、加齢によるものと腰の神経が圧迫されているものから来るしびれのようです。
腰からですか、腰部脊柱管狭窄症ですね。
腰の神経が圧迫されて神経が痛みの信号を発している状態です。
今回の薬はその刺激を抑える薬なんですか?
色々な薬があるのは医師から話を聞いているのですが小難しくてよく分かっていません。
初めての薬だと自分のご病気だけでいっぱいになり薬のことまで詳しく知るのは大変ですよね。
薬は”もの”と”情報”がセットで効果が出てくるものです。病気に対する知識(病識)は治療開始初期から持っておいたほうがいいと考えますが、薬の”説明”や”相談”は薬を飲み始めてからもずっと受け付けています。少しずつ薬の知識(薬識)を増やしていけばいいと思います。
はい、分かりました。
まずは今回のタリージェについて説明をお願いします。
タリージェは「末梢性神経障害性疼痛治療薬」というカテゴリーに分類されます。神経に問題がある場合にその痛みを取る薬という意味です。
神経を走る電気信号を抑えることで、痛みの信号が脳に届かないようになり痛みを感じにくくします。
ただ、痛みの信号をブロックしてしまうことに加えて覚醒状態を維持する信号も抑えてしまうことがあり、それが「眠気」「ふらつき」の副作用として現れてきます。
あぁ、なるほど。イメージはできました。
これを1日2回朝夕の食後ですね?
はい、タリージェに付属の「添付文書」から初期用量は1回5mgでそれを1日2回服用するように書かれています。
朝食後、夕食後の間隔は8時間以上あけるのが理想です。
効果はすぐ出てきますか。
低用量から少しずつ増やしていく薬になりますので効果を実感し始めるのは少し時間がかかります。
そうなんですね。効果が実感できないと飲むのをやめてしまいそうで。
すぐに効果が出てほしいです。
そうですよね。
眠気やふらつきが起こりやすいお薬になりますので、安全面を考えてタリージェに体が慣れてくるのを少し待つことが必要になります。
私はタリージェがご自身に合った薬なのか、体が薬に慣れてきたのかを確認するために14日分という処方になっているのだと考えています。
安全な方法で治療を受けたいのでまずは飲んで様子を見ます。
はい、よろしくお願いします。
2週間継続して飲み、服用した後に感じたことを医師に必ずお伝えくださいね。
分かりました。
以上、薬局での服薬指導を再現してみました。
現実は病院でどんなお話を聞いているのか全く分からない状態からのスタートになります。なので、薬の説明の際に「食い違い」が生じやすいと感じてしまう部分がなんとかならないかな?と日々模索しています(詳しく話をしてくれない方もいますし、そもそも医師の説明を勘違いして理解している人もいます。)
お読みいただきありがとうございました。以下は余談です。
<先述した病識と薬識について>
病識について。医師が現場で説明するのが一番ですが、3分診療と言われる(さらにコロナの影響でもっと短くなっている)現場で十分な説明がされているのは珍しいことになってきていると薬局で働いていて感じています。
病気の知識をこのブログを通して身につけてもらえれば
医師の負担も減ったり
患者さん自身の治療に対する自己決定能力が向上したり
と現場に還元できるかなと思っています(薬局での説明も患者から積極的に質問してくれるようになってスムーズに行く気もしてます)
薬識について。薬での治療は急性疾患を除き長期戦になる場合が多いです。
病気というマクロなイメージのしやすい知識とは違い、くすりというミクロな知識は大学で勉強した経験上色々と理解しづらい面が多々あると思っています。
そのため、私は患者さんには初回を除き「1回の説明に最低1個の情報を」を意識して伝えるようにし、患者さんの薬の知識の積み重ねに努めています。
同じく薬剤師の方には「1個は新しいことを説明する」
病気を治療中の方には「1個は新しいことを聞く」
といった心構えで治療に臨んでいただくと良いのかなって思いました。
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