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γ-GTPと聞いた第一印象について「お酒を飲みすぎると値が高くなる項目だ。」と思った方も少なくないでしょう。
たしかにγ-GTPは、お酒を飲みすぎることで値が上昇しますが、それ以外に脂肪肝、胆石、胆管の病気や薬剤の影響などでも上昇することがあります。
今回は、そんなγ-GTPの数値の見方などを中心にお伝えしたいと思います。
もくじ
γ-GTP(ガンマ グルタミルトタンスペプチダーゼ)とは
γ-GTPとは、タンパク質を分解する酵素の一種で、アミノ酸の生成にかかせない酵素です。
また、γ-GTPは胆道から分泌されるため肝臓の解毒作用にも関わっています。
解毒作用というのは、アルコールや薬剤などの有害物質を毒性の低い老廃物として処理して、胆管から十二指腸に排泄することになります。
γ-GTPは多量の飲酒だけでなく、他の原因による肝臓や胆のうの病気でも値が上昇するので、血液検査により早期発見に繋がるとされています。

最近の話題では、多量の飲酒によるアルコール性脂肪肝だけではなく、栄養過多や肥満が原因の非アルコール性脂肪肝(NAFLD)が増加傾向にあります。
これを放置しておくと非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へ進展して、さらに肝硬変や肝不全となることもあるので注意が必要です。
血液検査では、γ-GTP値だけでなくASTやALT値も高くなる傾向があります。
γ-GTPの測定
γ-GTPは生化学自動分析装置で測定され、採血から結果が出るまで約60分かかります。
◆測定原理
基質のγ-グルタミル-3-カルボキシ-p-ニトロアニリド(γ-Glu-3C-pNA)に検体中のγ-GTPが作用して5-アミノ-2-ニトロ安息香酸(ANB)を遊離させます。
このANBの増加する速度を400~425㎚の波長で測定することでγ-GTPの活性を求めます。
※基質とは、酵素と結合して酵素が働く場所となる物質のことです。
基準値と異常値
◆基準値
・基準値:50 IU/L以下
※基準値は検査機関によって多少異なります。
◆異常値
異常値は以下のように分類されます。
・要注意:51~100 IU/L
・異常:101 IU/L以上
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・要注意または軽度異常(51~100 IU/L)
アルコール性肝障害や薬物肝障害、脂肪肝などが進まないように生活習慣の改善が求められます。
具体的には、お酒の量を減らして休肝日をつくる、バランスの良い食事を摂る、適度な運動などになります。
・中等度異常(101~200 IU/L)
飲酒の習慣があれば、アルコール性肝障害が疑われます。
飲酒していなければ、肝・胆道系の障害(肝炎、胆石など)が疑われるので、精密検査を行なう必要があります。
また、薬剤(抗てんかん剤、抗凝固薬、向精神薬、ステロイドなど)でも上昇するので、服用の有無についての確認が必要です。

・高度異常(200~500 IU/L)
アルコール性肝障害だけでなく閉塞性黄疸や慢性の肝炎も強く疑われます。
これを放置すると、肝硬変・肝がんのリスクが非常に高くなるので、すぐに医療機関に受診して下さい。
重度異常(500 IU/L以上)
急性アルコール性肝炎など命にかかわる極めて危険な状態にあるため、緊急入院精査と治療を必要とします。
◆数値が高かったときの自己チェックと改善方法
《自己チェック》
- アルコールを過剰摂取している。
- 肥満である。(BMI:25以上)
- 薬剤またはサプリメントを服用。
これらが当てはまれば、何らかの肝障害を起こしている可能性が高いので医療機関に受診しましょう。
γ-GTPが100 IU/L以下であれば、生活習慣を改めることで数値を改善する可能性があります。
生活習慣改善での適度な酒量は、「厚生労働省」よりアルコール20g/day程度を推奨されています。

- ビール 500ml
- 日本酒 1合(180ml)
- 焼酎(25度) 0.6合(110ml)
- ワイン グラス2杯
また、不必要な薬剤やサプリメントを摂取しないようにすることも肝臓の負担軽減に繋がります。
まとめ
γ-GTPは、お酒の飲み過ぎで数値が上がることが知られていますが、お酒以外の原因でも値が上昇します。
特に非アルコール性脂肪肝(NAFLD)が知られるようになり、放置することで非アルコール性肝炎(NASH)へ進行してしまうこともわかってきました。
以上より、健康診断で異常を指摘された時は「まだ症状がないから大丈夫だ。」と自己判断せず医療機関に受診して早めの対処をするようにしてください。
ライター名(ランサーズ名):まさざね君
<経 歴>
臨床検査技師の国家資格を2000年に取得。
臨床経験は、総合病院で15年、癌・肺疾患専門病院で5年目になります。
臨床現場では、健診から救急患者まで生理検査を中心に従事しています。
臨床検査技師は、血液などの検査値だけでなく、細菌培養、画像診断、細胞や組織などについても検査して報告しています。
これらの検査を通して、病気の原因、検査、治療、予防など分かり易くお伝えしていきます。
気になるは病気について、少しでもお役に立てれば幸いです。
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